5年間キャストをしていました。
色々感動したことはあったんですが、これはその中でも特に素敵な話です。
私はシーでポップコーンのワゴン担当でした。
閉園時間が近づき時間になったのでワゴンを畳んでいると、小さな子供の泣く声が聞こえてきたんです。
「後で買ってくれるって言ったじゃないかぁ!!」
どうもポップコーンを後で買うという約束をお父さんがしていたらしく、私がワゴンを畳んでいる姿をみて泣き出してしまったようです。
「まだポップコーンを売っているところはありませんか?」
お父さんも困って私に聞いてこられました。
しかし残念ながら私のワゴンはシーでも最後までやっているワゴンの1つでした。
「すいません、もうポップコーンを売っているところはありません。」
その返答を聞いた子供はさらに大きな声で泣き出しました。
なんとかしてあげたい、でももうポップコーンはありません。
その時でした。少し前にポップコーンを買った男性が私に声をかけてきたんです。
「ポップコーンの入れ物だけでも出せませんか?私のを少し分けてあげたい。」
嬉しかったです。
私はすぐにしまってあったレギュラーボックス取り出して差し出しました。
「これを使って下さい!」
男性が自分のポップコーンを空のレギュラーボックスに分けていると、
「僕のも」「私のも」と、
ポップコーンを買ってまだ近くにいた人たちが男性のもとに集まってきて、レギュラーボックスに少しずつポップコーンを入れていくんです。
レギュラーボックスはすぐに一杯になりました。
男性は溢れだしたポップコーンをこぼさないように子供に差し出して言いました。
「最後まで楽しい思い出を作ってね」
子供はそれを受け取ると本当に嬉しそうにお礼を言っていました。
私の売ったポップコーンがただのポップコーンから「人の優しさ」に変わったこと。
そしてその優しさが集まってレギュラーボックスを一杯にしてしまったこと。
そんな光景をみて、私はうっかり泣いてしまっていました。